竜亀(Dragon Turtle):爬虫綱カメ目
フランスには恐るべき竜の亜種と言うべき怪物の伝承が残っている。
タラスコンの「タラクス」、ラ・フェルテ・ベルナールの「ペルーダ」である。
これらの怪物は川岸に棲み、屈強な馬よりも巨大で、無数のスパイク状のトゲのある背甲に覆われた体躯に長く強力な尾を持つ。
そして何よりも容赦無く家畜や人間を襲って餌食とする凶暴な肉食性の怪物で、周辺の住民を恐怖のドン底に陥れていたそうである。
本個体は南フランスにて入手した亀の一種で、この怪物のイメージの原型になったものと考えられる。
この亀はその背甲に対して頭部や尾部、四肢などの各器官が大きすぎ、通常の亀の様に各部を引っ込める防御体勢を取る事は、まず不可能であったことは一目瞭然と言える。
背甲の大袈裟なトゲは、亀本来の防御体勢を取ることが出来ない故の、所謂攻撃的防御として偏向した進化を遂げた結果ではないか、と推察出来る。
見落としやすいのだが、背甲正中線上のトゲの下に針状の器官が隠れるように存在しており、これは毒腺を有した毒針であるのではないかと考えられる。
つまり、襲いかかる捕食者に対して背甲のスパイクで威嚇し、あまつさえ噛みつきに来る攻撃者には隠された毒針での手痛い反撃を行っていた事が、この生物の身体的特徴から導き出せるのである。
亀の類はスッポンやワニガメの様に過剰な攻撃衝動を有する種も居り、この生物もこう言った特性を併せ持っていた故に凶暴な印象を与えた可能性は高いと考えられる。
また実際、爬虫類は基本的に棲息環境が整えば死ぬまで大きくなる性質がある為、かなり巨大な個体が存在していた可能性も否定できず、それが伝承に結びついたとも考えられるのである。
採集年 2004年
サイズ P10 (530×409mm)
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