悪魔(Demon):哺乳動物綱真獣下目霊長目
本標本はスペイン東部ピレネー山脈の麓のとある修道院から特別に譲り受けた物である。
かつて此処はベネディクト会に属する修道院で、15世紀当初、ドメニコと呼ばれる修道士が退治した「悪魔」の死骸が400年近くヴァチカンに報告されることもなく保存されていたのである。
当時、悪魔の存在を神に先立ち実体として証明することは、これすなわち「異端」と見なされる危険性を多分に含み、その死骸を提示すること自体タブー視されていたと言うことは想像に難しく無い。
それ故、21世紀の現在に至るまでその事実が隠蔽されていたようである。
では、これは一体なんなのであろうか(無論、私は悪魔の存在など信じない)?
この生物は霊長類の一種(つまり猿の仲間)、原猿類の未確認の新種であると私は考えるのである。
原猿類とは進化の過程で齧歯類から分岐した霊長類の原始的な種、ツパイからメガネザルあたりまでの樹上を生活圏とする原始的な猿の仲間のことである。
それらが樹上で活動し、種として定着していった中で、やがてコウモリのような翼を獲得し木々の間を滑空する能力を得た種が現れた。
それがこの「悪魔」とされる生物であると考えられる。
おそらくは、アフリカ大陸との交易の荷に混じり、キリスト教圏のヨーロッパへと移り棲んだ個体であろうと推察される。
絶滅に追い込まれた理由、その記録すら残っていないことはここで語る迄もない。
採集年 2004年
サイズ B3 (364×515mm)
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