Coelacanth Complex




 西暦2011年秋、私はとある無人島に調査に向かったのだった。
 本土より千数百キロも離れた小笠原諸島の、まさに「離れ小島」と呼ぶにふさわしい…残念ながら現段階では某島としか言えないのだが…その島の周辺海域及び島内の淡水域に人知れず生息している魚類が今回の調査対象。

 それは、南アフリカ、コモロ諸島、そしてインドネシアで発見された「シーラカンス」の現生属である「ラティメリア」の新種と、その眷属とみられる数種の魚類だった。

 新種のラティメリアは他の現生ラティメリアより小型ではあるものの、形態的には大差はなく同属と考えられる。
 また、同時に発見された眷属たる魚も、形状はそれぞれ現存する様々な魚類に酷似しているが、シーラカンス目の特徴である多くのヒレ(トータルで十基)を持っている。
 さらに、これらの魚はシーラカンス同様「胸ビレ」「腹ビレ」「第二背ビレ」「第一臀ビレ」が腕のような骨格と筋肉を具えた構造になっている。

 

 

 これらから、現存する魚類に似たシーラカンスの眷属たちは、所謂「収斂進化」により長い時間をかけて生息環境に適応したものと考えることが妥当と言えよう。

 何れにせよ、この島内淡水域、及び周辺海域のさらなる調査探索が必要である。
 今後の新たな発見に期待して頂きたい。

江本 創



戻る